【レポート】『デザインの解剖展』解剖度合いが凄すぎる企画展
21_21 DESIGN SIGHTにて開催中の『デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法』は、グラフィックデザイナーの「佐藤 卓」氏が行っているプロジェクトである「デザインの解剖」を紹介し、「きのこの山」をはじめとした身近な商品を、これまでもかというくらい徹底的に解剖した成果を惜しみなく公開する企画展です。
商品誕生の歴史的背景からネーミング、ロゴ、パッケージ、原材料等々、解剖度合いが凄すぎて可笑しく思えるほどの展示ですが、商品の裏側や様々な関連性などを深く知ることは、表面上だけでない本質を捉えたデザインの為の重要な土台となるのです。
また、楽しい作品が所々に用意され、視覚的にも体感的にも楽しめる企画展となっています。
そんな『デザインの解剖展』の魅力を選りすぐって紹介します。
デザインの解剖とは、
1.身近なものを
2.デザインの視点で
3.外側から内側に向かって
4.細かく分析することで
5.ものを通して世界を見る
6.プロジェクトです。
企画展のエントランスではこう記されたパネルが展示されています。
言い直してみると、デザイン的視点で商品を解剖(分析)し解き明かすことで、それに関係する様々な世界(人、文化等)が見えてくる、そんなプロジェクト。
次のパネル群では手法と実践の順序が記されています。(サムネイル写真をクリックで拡大)
<実践部分の抜き出し>
ネーミング→ロゴタイプ→外装(パッケージ)→本体→原材料の順で、分解と実測を行い、読み解いたり予測。
その後、それに携わる様々な人へのインタビューや工場見学を通して、予測の成否や解剖の掘り下げを行う。
インタビューを個人で行うには敷居が高いですが、一般に開放されている工場見学なら気軽に足を運ぶことができます。それを目的に工場見学するのも良さそうです。
「きのこの山」の解剖
部屋を移して展示されているのは明治のお菓子「きのこの山」の解剖です。(ここが本展のメイン会場)
入り口には「ここからの展示について」との案内がありました。
「本展は文章が多く、全部読むと とても時間がかかります。」
「でもご安心ください。時間の少ない方のために短い文章をご用意しております。”要約”のところを読んでいただくだけでも要点をご理解いただけます。」
「時間の許す方は、さらに全体を読んでいただけると詳しい内容をご理解いただけます。」
ええ、きのこの山の解剖だけで本1冊できるんじゃないかと思うくらいの文章量でしたよ(笑) 時間に余裕のある時に行くことをオススメします!
<きのこの山>の解剖では、チョコレート菓子の歴史→チョコレート菓子の市場→ネーミング→ロゴタイプ→・・・と50近い数の解剖が展示されています。一つ一つが写真(上)の文章量!時間が少ない方の為の”要約”はパネル手前の台座部分に書かれています。
パッケージ(外装)解剖の近くに展示されている模型。パッケージの背景に描かれたイラストレーションを立体化した物。元になったイラストレーション1つにしても、深い分析考察が行われています。ちなみにここが「きのこの山」だそうです。
なんだこれ(笑)
実は部屋に入って目に飛び込んできたこれの前に順路に添わず直行してしまいました(笑)
食べてみたいけど、本物以外は食べにくそうです。エリンギなんてチョコ部分食べてしまたら後つらいよー!
菓子本体の断面〜歯応えまでの解剖。もはや一般的な認識のデザイン分野を超えての解剖になっていきますが、これも商品を解き明かす為の段階。(と書いてますが、この時点ではちゃんと趣旨を理解していなかった為、ここまでやるかーと段々可笑しく思えてきていました)
巨大な<きのこの山>の断面模型もあり、記念撮影等も楽しめます。(展示会場は工場の映像以外はどこでも撮影可だったと記憶しています)
その他明治商品の解剖
会場ではその他、『明治ブルガリアヨーグルト』『明治ミルクチョコレート』『明治エッセルスーパーカップ』『明治おいしい牛乳』といったお馴染みの商品の解剖の成果が、『きのこの山』と同様多数展示され、それと共にそれぞれに面白い作品が展示されています。(写真は明治ミルクチョコレートの巨大模型)
『明治ブルガリアヨーグルト』での作品。スプーンでヨーグルトの内容量を表示。一般的なスプーンで約37杯分とのこと。(意外と少なく思えましたが、いかがでしょう?)
『明治おいしい牛乳』での作品。書体が違う? そう、手前のツマミを回すことによって、書体がシームレスで変化する作品です。本当の書体で止めることができるでしょうか?
『明治おいしい牛乳』での作品をもう一つ。おそらく本展示会の一番人気。積み木の文字を組み合わせて来場者が自由な牛乳を作ることができます。
ちゃっかりサイト名の牛乳も作らせていただきました!
楽しー!「ヨーグルトか!」と突っ込んでほしい。
本展に対する「佐藤 卓」氏のメッセージ とまとめ
次の小部屋には学生による「デザインの解剖」プロジェクトと、佐藤卓 氏のメッセージ”デザイン教育としての「デザインの解剖」”が展示されていました。
エントランスにあったディレクターズメッセージと合わせて、読むことで「デザインの解剖」の有意義性がよりわかることでしょう。
両方のメッセージ(日本語部分)を並べておきます(サムネイル写真をクリックで拡大)
展示を見終わり、佐藤卓 氏によるディレクターメッセージ等を読み返すと、身近な商品一つにも多くの人の思慮、重ねた歴史分の時代背景があり、解剖(分析)するほどに様々な世界との関わりが見えてくるのがわかります。
何かをデザインする時、そのもの、またはそれに近いものの「デザインの解剖」を知るのと知らないのでは大違い。デザインとは関係なさそうな香りや歯応えもデザイン次第で生かしたり殺したりしてしまうかも知れません。ものと人との関わりもより良いものとできるかも知れません。
表面上だけでない本質を捉えたデザインの為の重要な土台となる「デザインの解剖」ぜひ取り入れたい視点、手法です。
会期中、再度行ってみたいと思うほど、とても為になる とても楽しい企画展でした。
会期:2016年10月14日(金)- 2017年1月22日(日)
休館日:火曜日、年末年始(12月27日-1月3日)
開館時間:10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般1,100円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
展覧会ディレクター:佐藤 卓