「豊島美術館」自然と融和し人をスローリーにする異空間
瀬戸内海にあるアートな島『豊島(てしま)』にある『豊島美術館』はそこにある自然と「母型」とされる建物自体が作品です。
そしてそれ以外の作品は何もありません。
「母型」の中で見えるものはと真っ白な空間と床を這う水、風に揺れるリボン、そして建物に開いた2つの大きな穴から見える自然のみ。
だけど、それが多くの人の心を捉える場所となっているのです。
海の見える美術館と受付
豊島美術館の前には海の見える絶景が広がっていて、ここへ訪れた人々はまずそれを目にすることになります。
チケット売り場は丘をくりぬいた様なこちらの中にあります。
中にはコインロッカーとトイレもあります(ここにのみ)
購入したチケットは作品である「母型」の前で、そこに入場する前に見せることになります。
「母型」とは中で繋がっているわけではなく、再度出て、外の道を歩いて向かいます。
「母型」までの道
チケット売り場を出たら、順路である左の道を進みます。
時計回りに進んで、後で右側の道から戻ってくることになります。
美術館前に広がる瀬戸内の景色を一段高い場所から眺めながら進んで行きます。
母型までは遠くありません。ゆっくり進みましょう。
途中、見晴らしの良い場所にベンチがあります。
ここから見える絶景も後の「母型」を楽しむ為に必要なものだと思います。
「母型」はこの先すぐです。
「母型」
(出口側から振り返って見た母型)
「母型」に入る前にチケットを見せたら、靴をぬいで靴下風のスリッパに履き替えます。
作品である「母型」を汚さない為もありますが、中で足音を響かせない為でもあります。
中はとても広い空間ですが、とても音が響きやすいのです。
入り口で普通に話す声が、奥にいても響いてきます。
「母型」に入るとすぐ、空に開いた大きな穴以外、何もない真っ白なただただ広い空間が広がります。
予備知識があっても「本当にこれだけ?」って思うかも知れません。
床のいたる所から湧き出す水
「母型」の床からはあっちこっちから水がゆっくり湧き出します。
その水はそのうち動きはじめ、
その先に溜まった水とくっついたり、横をすり抜けてくっつかなかったり
くっついた水も動き出したり、一緒になって留まったり
その不規則な動きが面白いです。
子供の頃、雨の窓や、風呂の壁で、水滴が他の水滴とくっ付きながら、流れ落ちていくのを飽きることなくずっと見ていた感覚になります。
良さがわかるのには時間がかかる
でも、はじめのうちは正直「なんでみんなこれで大絶賛!?」って思いました。
行く前にいろんなコメントやブログ等で「これまで行った中で最高の美術館」の様な言葉の数々を目にしていたので、期待しすぎから入ったのもあります。笑
でも結局この母型の中で2時間近く過ごしました。
とても居心地が良かったのと、他の人が大絶賛する理由を少しでも掴んでやろうと。笑
そうしたら少しわかった気がします。
湧き出す水、流れる水、溜まった水、そこに映り込む母型の白、空の青、木々の緑、直接見るそれらや、風に揺れるリボン
鳥の声、風に吹かれてざわめく緑、工事している様な音、響く誰かの声
風、太陽のぬくもり、気温
ずっといるとだんだんそれらが融和して一つになってくるのです。
もはや外とは別空間に思えてきます。
時間は思いの外、早く過ぎました。
自身がこの場所と融和することによって、スローリーになってたのでしょう。
のんびりしたい人には◎です。(逆も言えます)
「母型」の中は撮影禁止
「母型」の中は撮影禁止です。
仕方ない。五感で堪能する美術館です。
温泉というものに全く入ったことがない人に映像を見せても、本当の良さは伝わらないでしょう。
みんな言いますが、行って体感しないとわかりません。
でも行ってもわからないかも知れません。
カフェと売店
母型に似てる手前の小さい方の建物の中はカフェと売店になっています。
中も母型を小さくした様な空間になっています。
食事は左で注文、開口部の下の円でいただきます。
お土産は手前の2つの円に並べらて売られています。
オリーブライスをいただきました。素朴で優しい味わいです。
母型に近い居心地の良い空間でいただくことができました。
豊島美術館という場所
豊島美術館は「母型」を含めた全てがとても居心地の良い美術館でした。
私の感覚としては美術館というより、山の上や温泉みたいな、のんびりと心を癒すような場所でした。
でもこれは作品でそれらと比較するのもまた違います。
母型に入ってすぐ引き込まれる人もいるとは思いますが、私の感覚では時間がかかります。
時間をかけてもわかる保証はありませんが、少なくても時間に余裕がない時には向かないと思います。
訪れる時はぜひ時間に余裕を持って行ってみてください。
違う季節、違う天気の日にはまた違う表情を見せてくれるかもしれません。
またぜひ訪れたい美術館です。