日本屈指の星空体験!徳島県『剣山』の魅力
アートな自然に触れる。今回ご紹介するのは日本最高クラスの星空体験のできる場所、徳島県の剣山(つるぎさん)。都市から離れ、その光が届かない標高1955mの山頂から観る夜空は、何も遮る物がなく、美しい星々に包まれ浮かぶかのよう。時間を忘れて見入るその天体は人には作り出せない壮大なアート。
そして剣山は他にもアートを感じる自然がいっぱい!日本最高の星空が観れるだけじゃない、アートな剣山の魅力をご紹介します。
美しい星空を観る条件が揃った剣山
澄んだ空気に、明るい都市から離れた高い山の上。剣山は日本では数少ない美しい星空を観る条件が揃った場所です。
そもそも日本は光害大国。数多ある都市の光が明るすぎる影響で、星空を観るのに適しているとは言えません。「光害マップ」で検索すれば知ることができますが、北海道や離島でさえ美しい星空を観られる場所は一部に限られているのです。剣山はそんな限られた場所の一つです。
〈日本の光害マップ〉青くなっている辺りが日本では光害の影響が少ない土地。一部にしか無いことがわかる。
〈四国、剣山周辺の光害マップ〉周辺一帯が光害の少ない土地かつ、都市から離れた高い山で空気も澄んている為、美しい星空を観ることができる。また近くに外灯や高い樹木等もない為、星景の撮影にも適している。
山頂に滞在しやすい設備の整った剣山
美しい星空を観るのに剣山をおすすめするのにはもう一つ理由があります。それは2000m近い山頂でありながら、そこに滞在しやすい設備が整った場所だからです。
山頂は広く整備され、木道が敷かれています。そしてこれだけ高い山の山頂では珍しい水洗トイレも完備されています。ベンチも点在する山頂は、さながら公園の様でもあります。
〈剣山山頂一帯〉山頂の植物を守る為であるが、木道が敷かれていて、そこにベンチも点在する。夜も腰を下ろしたり、カメラを設置しやすい。人が少なければ寝転がって星に包まれることもできる。
〈山頂の水洗トイレ〉雨水を利用している為、流れる水は茶色くなっているが、立派な水洗トイレ。広くて綺麗。
剣山頂上ヒュッテ
また上記のこの場所へ、徒歩1分とかからない場所には宿泊施設『剣山頂上ヒュッテ』があります。宿泊は夕食・朝食付きと素泊まりが選べ、混雑時でなければ個室が割り当てられます。
〈剣山頂上ヒュッテ〉山頂とほぼ変わらない場所にある宿泊施設。食堂のみの利用も可。
中腹まで行ける登山リフト
剣山には、体力に自信の無い方、カメラや三脚等撮影機材を持って登る方に嬉しい登山リフトが運行しています。
それでも山頂まではそれなりに距離はありますが、このクラスの山の山頂としては比較的ラクに行けます。登山メインの方だと物足りない行程となるでしょう。
登山も楽しみたい方には隣の山、次郎笈(ジロウギュウ)まで縦走して帰ってくることをお勧めします。今回の私はリフトを利用し、宿泊の剣山頂上ヒュッテに三脚等重い荷物を置かせてもらって、次郎笈まで行ってきました。視界を遮る物がなく360度山々を見渡せる次郎笈からの眺めは最高でした!
〈剣山側から見た次郎笈〉次郎笈への1本道が続く。ここから見た次郎笈と背景に広がる山脈の数々が絵になるほど美しい!
〈標高1930mの次郎笈山頂より〉1箇所から360度全方位見ることができる。どこを見ても見渡す限り続く山脈!
リフト(西島駅)から山頂までの見どころ
剣山では日本最高の星空以外にも、山頂から見る次郎笈他、心を捉える風景やアートを感じる自然のオブジェ等を見ることができます。今回私は大剣神社を回るルートで登り、そこで出会ったそれらをご紹介します。
〈枝葉なく聳える木々と倒木〉
雷に撃たれた物だと思われます。並ぶ姿は何か心に残るものがありました。
〈大剣神社とその後ろに聳え立つ御神体の大剣岩〉
「天地一切の悪縁を絶ち 現生最高の良縁を結ぶ」とあります。この日は平日の為か開いていませんでした!拝んできましたが、ご利益をいただきにまたリベンジしたいです。
〈御神体の大剣岩〉
大剣岩の全容は神社から御神水のある場所まで降る途中で見ることができます。ものすごく大きい!神社から見えてた姿は頭の一部分だけだったんですね。御神水は名水百選にも選ばれた湧き水です。
〈御神体の大剣岩とさらに後ろの大岩〉
迫力の大岩です。どうやってこの形になったのか!まさに自然の芸術!
〈宝蔵石神社〉
頂上付近にあるこちらも大きな岩です。岩そのものが祀られています。近くまで行って岩肌を見ることができます。
こう岩の写真を並べると剣山が岩山の様にも見えますが、そうではありません。所々オブジェの様に存在するのです。
刻々と表情を変える山の景色たち
そして、山の景色たちもまた心を捉える表情を見せます。
山の天候は変わりやすい。時間や天候で景色たちは刻々と表情を変えていきます。時に清々しく、時に神秘的。その場、その時にしか見せない姿を心に焼き付けましょう。
〈雲の隙間から山々に射す光〉
〈雲に覆い尽くされた状態から一瞬視界が開けた時に見せた夕刻の山々〉
山頂で素晴らしい星空を見る為に
最も大事なことは天候の良い日を選ぶことです。山の天候は変わりやすく、星を観る時間、晴れるかは運次第。でも少なくても予報では天候の良い日を選びましょう。
私が行った日は「昼は晴れ、夕方から曇り、夜時々晴れ、次の日は曇り時々雨」という微妙な予報でした。夕方雲に覆われ目の前の視界がゼロになった時は「これまで素晴らしい景色や物を見ることができたので充分だ」とあきらめかけました。しかし午後7時すぎから雲が段々少なくなり9時頃、上の写真の様な素晴らしい星空を観ることができました。
(この記事で載せた写真にはいろんな天候が写っていますが、全て同じ日に撮った物です。)
もう一つは月の影響が少ない日を選ぶこと。簡単言えば新月に近い日、満月から遠い日を選ぶことです。都市から離れると月の光は想像以上に明るい!星の見え方にも大きく影響しますので注意しましょう。
山頂で星空を見る為に必要な物
登山リフトがありラクに登れるからと言っても、2000m近い山です。靴をはじめとした山の装備に、下記を加えてください。
レインウェアと防寒着
山頂の夜はとても寒い!寒さを気にせず長い時間星空を楽しむためにも防寒は少し過剰に思えるくらいで丁度良い!
私が行ったのは9月初旬。まだまだ夏で平地では30℃を超えていた日でしたが、山頂の夜の最低気温は12℃。山頂では強い風が吹いていたので、体感気温はさらに低く感じました。
天候の変化への備えとしても山登りにレインウェアは必須ですが、雨が降らなくても風を防いでくれます。中に着るものによってはダウンより暖かく感じられる為、必ず持って行ってください。
ヘッドライト
山頂には外灯がなく真っ暗です。手を空けておく為にもヘッドライトは必須です。赤色LEDも点灯する物なら他の方に気を使わず使用することができますし、星景撮影をする時にも手元を照らすのに役立ちます。
剣山へのアクセス方法(バス)
これまで、良いことづくしの剣山の魅力を紹介しましたが、剣山最大の難点は登山口までのアクセスの悪さです。登山口である見ノ越まで、長く続く悪路を車で行く方法もありますが、ここでは公共交通機関を使って行く方法を取り上げます。
公共交通機関を使って行く場合、列車と長時間のバスを乗り継いで行く必要があります。剣山登山口へのバスは3つの経路がありますが、それぞれ運行期間があり、運行日が決まっています。バスの運行日以外は公共交通機関を使って行く方法はありません。
バスの本数はそれぞれ1日1本か2本です。
徳島県美馬市のサイトに登山バスの情報がありますが、下記に整理して記載しておきます。バス運行時間に関しては阿波ナビというサイトが見やすかったです。
1.池田東祖谷ルート(阿波池田BT~久保~剣山(見の越)) ※途中乗り換え1回
最も運行期間が長いが、最も乗車時間が長い経路でもあります。3ルートのうち徳島駅に最も遠い駅(阿波池田駅と大歩危駅の2駅)からの乗車となります。途中、久保でバスの乗り換えが必要です。
<乗車時間>約3時間(阿波池田を利用の場合)※大歩危駅からなら45分ほど短縮 <1日の往復数>2往復
<2016年の運行期間>
4月18日~11月30日の土、日、祝祭日のみ運行(但し、下記期間中は毎日運行)
[GW期間中] 4月25日~05月10日
[夏休期間中] 7月21日~08月31日
[紅葉期間中] 10月05日~11月06日
2.貞光一宇ルート(JR貞光駅~見ノ越)
運行期間は短いですが、運行日が合うならこちらを選びましょう!最短かつ乗り継ぎがありません。
<乗車時間>約1時間半 <1日の往復数>2往復
<2016年の運行期間>
[夏季] 7月16日~8月21日の土・日、祝日(8月11日~8月16日は毎日) 計17日間
[秋季] 10月1日~10月23日の土・日・祝日 計9日間
3.穴吹木屋平ルート(JR穴吹駅~川上~見の越)※途中乗り換え1回
3ルートのうち、徳島駅に最も近い「穴吹駅」から乗車できますが、途中、川上でバスの乗り換えが必要です。
<乗車時間>約2時間10分 <1日の往復数>1往復
<2016年の運行期間>
[春季] 4月23日~5月8日(期間中毎日)
[夏季] 7月16日~8月31日(期間中毎日)
[秋季] 10月8日~11月6日(期間中毎日)
何度でも行きたい山『剣山』
交通の便は良くない剣山ですが、行く価値が十二分あることは間違いありません。自然の作り出した造形に、天候と時間によって表情を変える神秘的な風景、そして視界を遮るもののない山頂でたくさんの星々に包まれるあの感覚は何度でも味わいたいものです。違う季節にもぜひ行ってみたい山です。