【レポート】『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』それは現代アートへのどこでもドア
六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中の『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』へ行ってきました。
世界で愛されるドラえもんを、国内外で活躍する28組の現代アーティストが、それぞれの想いで表現する企画展です。
ともすれば何を表現しているのか、理解しがたいことも多い現代アート。
ですが、本展は『ドラえもん』という共通の題材のおかげで、様々な作品が身近に感じられ、素直に受け入れることができるアート展となっていました。
言うなれば、ドラえもんからプレゼントされた「現代アートへのどこでもドア」
そんな『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』のレポートです。
『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』の作品
『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』で見ることができる28組のアーティストの作品うち、(個人的に)特に良かった12作品を紹介します。
村上 隆「あんなこといいな、出来たらいいな」
本展のメインビジュアルにもなっている、村上隆さんの巨大な作品。
ドラえもんの作品の中で一番大切なものを考えた村上隆さん
それが「藤子先生」ご本人だと気付き、加えて、描き上げたそうです。
村上隆さんおなじみのお花と、様々なドラえもんたちが埋め尽くす楽しい作品。
一緒に記念撮影する人が後を絶ちません。
村上隆さんの作品は、前回(2002年)の「ドラえもん展」で制作された「ぼくと弟とドラえもんとの夏休み」も同じフロアに展示されています。
今回の作品に、村上隆さんの15年分の進化を感じます。
福田美蘭「レンブラントーパレットを持つ自画像」
福田美蘭さん制作の並べられた作品2点。
前回(2002年)の「ドラえもん展」で制作された「レンブラントーパレットを持つ自画像」と、今回の作品「波上群仙図」です。
「レンブラントーパレットを持つ自画像」は同名の名画「パレットを持つ自画像」の丸い部分はドラえもんの手だった!という解釈で描かれたユーモア溢れる作品。
もうオリジナルを見ても、ドラえもんの手にしか見えなさそうです。笑
山口晃「ノー・アイテム・デー」
山口晃さんによる、独特のタッチで描かれるドラえもん。
ひみつ道具の出てこない話が3作品がありました。
写真のこちらがお気に入りです。
未来を知ってるドラえもんの表情がいい!
しりあがり寿「万事解決!劣化防止スプレーの巻」
しりあがり寿さん制作のアニメーション作品。
我らがドラえもんが、しりあがり寿風に劣化していくのを止める、ひみつ道具のお話。
シュールでちょっと気持ち悪い(←良い意味)作品でした。
大爆笑にはなりませんが、くすぐられたような笑いがこみ上げてきます。
(撮影不可)
渡邊希 「タイムドラベル」
タイムマシンでの時空間移動の揺らめきを、漆の持つ揺らぎで表現した作品。
一見ただの黒い厚手のビニールの様ですが、近づいてよく見ると、ドラえもんの様々な名シーンが描かれていることがわかります。
これらは作品に近づくことで見えてきます。
いろんなシーンを発見する楽しさがありました。
奈良美智「依然としてジャイアンにリボンをとられたままのドラミちゃん@真夜中」
奈良美智さんの描くドラミちゃん。
ドラミちゃんは本編で過去に一度、ジャイアンにリボンをとられた話があるそうで、奈良美智さんは2002年の作品でも、それを描きました。
上の写真の作品はそれの続編。
涙ぐんでるし、キバが出てきてるし、この後大変なことになりそう。笑
同じフロアには、その2002年の作品や、模型、習作、リボン付きのドラミちゃんの絵などもあり、奈良美智さんの描くドラミちゃんワールドに触れられる空間になっていました。
ゆるくて、コミカルな習作も良かったです。
れなれな「静かな決意」
チョーク画家の「れなれな」さんの描く、映画「のび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜」
黒板に白いチョークで、光を描くことによって作られた、圧倒的な画力の作品。
日本のアニメーション映画の、背景美術への敬意も感じられる作品でした。
ちなみにここからの作品は、映画が題材になっていて、作品のそばには、作品と映画、それぞれを紹介するパネルが設置されています。
篠原愛「To the Bright〜のび太の魔界大冒険〜」
「のび太の魔界大冒険」を篠原愛さんが描いた作品。
美しい人魚と、大怪魔肉食ツノクジラとおまけで、ドラえもんとのび太。笑
魅力的な女性と、ツノクジラの質感が、ファンタジー絵画好きにはたまらない作品です。
坂本友由「僕らはいつごろ大人になるんだろう」
映画「のび太の宇宙小戦争」でのクライマックスの1シーンを、リアルに描いた大きな作品。
元の大きさに戻った、リアルなしずかちゃんと、小人の住む惑星の街並み、敵の主力戦艦が描かれています。
リアルなしずかちゃん、魅力的でセクシーすぎて、小学生には見えません。笑
クワクボリョウタ「LOST #9」
影絵によって「のび太のひみつ道具博物館」を表現した作品(撮影不可)
日用雑貨の中を、ミニチュア模型の列車が、光を放ちながら走ることによって、壁に投影される影絵を楽しめる作品。
どこにでもある日用雑貨が、未来の街並みやファンタジーな世界を作り出す、とても面白い作品でした。
模型の列車が2往復する間、魅入りました。
近藤智美「ときどきりくつにあわないことをするのが人間なのよ」
「のび太と鉄人兵団」で、しずかちゃんがリルルに言ったセリフを元に描かれた作品。
鏡面の世界が、独特の世界観で描かれています。画力もすごい!
それにしても、しずかちゃん、なんて深いことを言う小学生なのでしょう。笑
増田セバスチャン「さいごのウエポン」
”カワイイ”の増田セバスチャンさんが表現する「のび太のドラビアンナイト」
増田セバスチャンさん色全開の、巨大な”カワイイ”ドラえもんのぬいぐるみです。
いや、ドラえもんは元々かわいいんですけど!
以上、本展で特に良かった12作品を紹介しました。
他にも、蜷川実花さんの写真作品「ドラちゃん1日デートの巻」や、後藤映則さんの「超時空間」などなど、素晴らしい作品が目白押しです。全部紹介したいほど。
グッズ売り場
作品の展示場を出たところに、本展を見終わった人だけが入れる、グッズ売り場があります。
本展の作品のグッズを中心に、本展専用のグッズ等がいろいろ売られています。
奥のスペースでは『藤子・F・不二雄ミュージアム』で売ってるドラえもんグッズも買うことができます。
グッズのセンス的にはこちらの方が上。(ずっと売っていく物なのである意味当たり前)
買ったグッズたち。
本展用のグッズは「公式図録」と「れなれなさん作品のクリアファイル」「かりんとう」
「ウソ800缶入りお菓子」と「ドラえもんプリントマシュマロ(丸い缶)」は『藤子・F・不二雄ミュージアム』のグッズです。
公式図録がオススメです。
れなれなさん作品のクリアファイルも、一見ドラえもんグッズに見えない格好良さがお気に入り。
まとめ・感想
『THE ドラえもん展 TOKYO 2017』、期待以上の企画展でした!
最初に書きましたが、現代アートの解釈って結構難しい。
それが、ドラえもんという、誰もが親しめる題材を通せば、こんなにわかりやすく、受け入れやすい物になるんですね。
ドラえもんからプレゼントされた「現代アートへのどこでもドア」
ぜひ開きに出かけてみてください。
開催期間:2017/11/1(水)~2018/01/08(月・祝)
時間:10:00~20:00(火曜日は17:00まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
入場料:一般1,800円/中学生・高校生1,400円/4歳〜小学生800円
アーティスト:蜷川実花、福田美蘭、村上隆、森村泰昌(コイケジュンコと共同制作)、会田誠、梅佳代、小谷元彦、鴻池朋子、佐藤雅晴、しりあがり寿、西尾康之、町田久美、Mr.、山口晃、渡邊希、クワクボリョウタ、後藤映則、近藤智美、坂本友由、シシヤマザキ、篠原愛、中里勇太、中塚翠涛、山口英紀+伊藤航、山本竜基、れなれな、奈良美智、増田セバスチャン
会場:森アーツセンターギャラリー
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階