サクッとわかる西洋美術史と絵画。知識と歴史観を身につけてセンスUP!
西洋美術史ってとっつき難いですよね。
西洋美術史の本を手にしても、文字が多くて読む気がしない。読み始めても途中で挫折する。。。
だけど、美術史を知ったら、絵画鑑賞ももっと深いものになるし、デザイン等のセンスもあがる。絶対知っておきたい知識です!
そんな西洋美術史の歴史観がサクッと身につくよう要点をまとめました。
最初は美術の歴史を5つに分けて年代の感覚をつかもう
西洋美術史は大きく分けると『古代』『中世』『近世』『近代』『現代』の5つに分けられます。
その5つの系統とおよその年代をあげてみましょう。
- 古代 キリスト教誕生以前の美術(3世紀頃以前の美術)
- 中世 キリスト教を中心とした美術(3世紀頃から15世紀頃までの美術)
- 近世 人間中心主義の美術(15世紀はじめ頃から18世紀中頃までの美術)
- 近代 市民社会から生まれた美術(18世紀中頃20世紀はじめにかけての美術)
- 現代 産業の発展と共に生まれた美術(20世紀以降の美術)
5つの長さは全然違ってて、古代って3万年くらいの幅があって、中世は千数百年、近世が350年くらいで、近代は約150年、現代は100年ちょっと。
今に近づくほど、期間が短くなってます。
現在、名画と呼ばれる作品のほとんどは「近世」つまり15世紀以降に生み出されたものになります。長い歴史の中でまだ600年くらいとも言えますね。
次に、5つの系統の特徴をまとめます。
古代(約3万年前から3世紀頃まで)
古代はキリスト教誕生以前の美術全てを指します。約3万年前から3世紀頃までと、とてつもなく幅広い。この時代に見られるのは「名画」というよりは「遺跡」とかに近い感覚の作品。ほとんどが作者不明の作品です。
古代の中でも中世に近い『ギリシア』や『ローマ』の美術は、特に彫刻や建築で優れていて、近世以降の美術にも影響を与えることになります。
(画像は約2万年前に描かれたとされるラスコー洞窟の洞窟絵画)
中世(3世紀頃から15世紀頃まで)
中世はキリスト教美術です。始まりは西暦313年のミラノ勅令(キリスト教公認)が目安ですが、それ以前のキリスト教が迫害されていた時代の作品も残っています。1000年以上の長期に亘って続いた美術ですが、キリスト教の枠組みという制約もあり、その長さほどの発展は見られません。
(画像は14世紀に描かれたフレスコ画のイコン(肖像画)『復活』)
近世(15世紀はじめ頃から18世紀頃まで)
近世はキリスト教の縛りから自由となり、人間中心主義となった美術。起点となる「ルネサンス美術」は15世紀頃から広まりはじめました。古代ギリシアやローマの美術も見直され、表現や技法が急速に発展しました。ヨーロッパ美術の黄金期です。多くの巨匠たちが登場し、現在に名画と呼ばれる作品の多くが、この時代に生み出されました。
(画像は16世紀はじめに描かれた ラファエロ『アテナイの学堂』)
近代(18世紀中頃から19世紀終わり頃)
近代美術は18世紀中頃からはじまった資本主義社会や市民社会から生まれた美術です。起点はフランス革命とも言われます。写実派・印象派・象徴派など、よく聞く◯◯派(◯◯主義)はこの時代に生まれた美術です。近世で完成されたと思われた美術が、新しい表現によって幅を拡げ、個性溢れる作品が多く登場しました。
(画像は19世紀後半に描かれた ゴッホ『星月夜』)
現代(概ね20世紀以降)
現代美術とは概ね20世紀以降の美術を指します。産業の発展と共に生まれた美術で、その表現や技法、哲学などが多様化するとともに、その境界がなくなってきている今日の美術(アート)です。
(画像は20世紀はじめに描かれた マティス『ダンス』)
5つをさらに分けると良く聞く系統名が
さて、5つの系統の歴史観がだいたいわかったところで、その5つをさらに分けてみましょう。
- 古代 原始美術・メソポタミア・エジプト・ギリシア・ローマ
- 中世 初期キリスト教・ビザンティン・ロマネスク・ゴシック
- 近世 ルネサンス・マニエリスム・バロック・ロココ
- 近代 新古典主義・ロマン主義・写実主義・印象主義・象徴主義
- 現代 フォーヴィズム・キュビスム・エコール ド パリ・シュルレアリスム・ポップ アート
5系統を細分した中で、代表的なものをあげて、概ねはじまった順に並べました。
ルネサンスをはじめ、聞き覚えのある名前が入ってるんじゃないでしょうか。
各系統・時代の代表的な美術、巨匠と作品
細分した系統の時代には、どんな美術が生まれたのか、どんな巨匠と名画があったのか、代表的なものを取り上げてみます。時代感がわかるように巨匠の生没年も記します。
古代 キリスト教誕生以前の美術(3世紀頃以前の美術)
- 原始美術 文明発達前の狩猟を描いた壁画など
- メソポタミア 浮き彫りの彫刻・宝石や貝で描いたモザイク画
- エジプト ピラミッド・スフィンクス・ツタンカーメン王の黄金のマスク
- ギリシア パルテノン神殿・ミロのヴィーナス
- ローマ ポンペイの壁画・コロッセウム
中世 キリスト教を中心とした美術(3世紀頃から15世紀頃までの美術)
- 初期キリスト教 キリスト教を題材としたフレスコ画やモザイク画
- ビザンティン 発達したモザイク画、イコン(キリスト、聖母、聖人たちを描いた肖像画)
- ロマネスク 修道院の浮き彫り装飾、聖書の挿絵
- ゴシック シャルトル大聖堂の「美しきステンドグラスの聖母」 ジョット(1267年頃-1337年)「スクロヴェーニ礼拝堂装飾絵画」
近世 人間中心主義の美術(15世紀はじめ頃から18世紀中頃までの美術)
- ルネサンス【初期ルネサンス】 ボッティチェッリ(1445年-1510年)「ヴィーナスの誕生」
- ルネサンス【盛期ルネサンス】 レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年-1519年)「最後の晩餐」「モナ・リザ」 ミケランジェロ(1475年 – 1564年)「システィーナ礼拝堂天井画と祭壇画壁画」「ダヴィデ像」 ラファエロ(1483年 – 1520年)「ヴァチカン宮殿ラファエロの間」
- マニエリスム ブロンズィーノ(1503年 – 1572年)「愛の勝利の寓意」 エル・グレコ(1541年 – 1614年)「オルガス伯の埋葬」
- バロック ディエゴ・ベラスケス(1599年 – 1660年)「ラス・メニーナス」 レンブラント(1606年 – 1669年)「フランス・バニング・コック隊長の市警団(夜警)」 フェルメール(1632年 – 1675年)
- ロココ ヴァトー(1684年 – 1721年)「シテール島への巡礼」 ブーシェ(1703年 – 1770年)「ポンパドゥール夫人」
近代 市民社会から生まれた美術(18世紀中頃20世紀はじめにかけての美術)
- 新古典主義 ダヴィッド(1748年 – 1825年)「ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト(ナポレオン)」 アングル(1780年 – 1867年)「グランド・オダリスク」
- ロマン主義 ドラクロワ(1798年 – 1863年)「民衆を導く自由の女神」 ゴヤ(1746年 – 1828年)「着衣のマハ」「裸のマハ」 ミレイ(1829年 - 1896年)「オフィーリア」
- 写実主義 ミレー(1814年 – 1875年)「落穂拾い」 クールベ(1819年 – 1877年)「オルナンの埋葬」
- 印象主義 マネ(1832年 – 1883年)「草上の昼食」「笛を吹く少年」 モネ(1840年 – 1926年)「印象・日の出」「睡蓮」 ルノワール(1841年 – 1919年)「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」 セザンヌ(1839年 – 1906年)「大水浴図」 ゴッホ(1853年 – 1890年)「ひまわり」 ゴーギャン(1848年 – 1903年)「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」
- 象徴主義 ルドン(1840年 – 1916年)「キュクロプス」 クリムト(1862年 – 1918年)「接吻」 ムンク(1863年 – 1944年)「叫び」
現代 産業の発展と共に生まれた美術(20世紀以降の美術)
- フォーヴィズム マティス(1869年 – 1954年)
- キュビスム ピカソ(1881年 – 1973年)
- エコール・ド・パリ シャガール(1887年 – 1985年)・藤田嗣治(1886年 – 1968年)
- シュルレアリスム ダリ(1904年 – 1989年)
- ポップ・アート アンディ・ウォーホル(1928年 – 1987年)
まとめ
いかがでしたか?西洋美術史の歴史観と、巨匠や名画の時代背景がわかったと思います。
西洋美術史の本も歴史観があれば、好きなところから読み始められるので、ちょっとは読みやすくなったはずですよ。
ちなみに定番の西洋美術史の本はこれです。
※なぜか2020年5月時点でamazonめっちゃ高い価格表示になってます。定価は1,900円+税の本なのでご注意ください。
作家個人についてはそこまで深く書かれてないけど、美術史全体に対する知識が深まります。年表も付いてるので、歴史観を深めやすい。
大学の講義でも使用される定番中の定番なので、図書館や大きめの本屋にもあると思います。
ぜひ合わせて読んで知識を深めてください。