複製画だけの『大塚国際美術館』が唯一無二の価値を生む5つの凄さ
徳島県鳴門市にある『大塚国際美術館』に行ってきました。
米津玄師さんが第69回NHK紅白歌合戦で、中継出演したことでも話題になった当美術館。
ここにある名画は全て複製作品。
本物はひとつもない!なのになんでこんなに人気なのでしょう?
それは、複製画であることをいかし、本物にはできない価値を生み出した美術館だからです。
そんな大塚国際美術館を、その唯一無二な5つの魅力と共に紹介します。
1.名画とその歴史を実物大で体感できる
大塚国際美術館にある陶板名画は、その数1000点以上。
5階に渡って展示されるその作品を順に観たら、距離にして約4km。
その多くは時代ごとに分けて展示されていて、自身の足で歴史をたどりながら観ることができます。
アレクサンダーの描かれた壁画などの古代美術
→聖堂や礼拝堂を再現した部屋などの中世美術
→レオナルド・ダ・ヴィンチなどのルネッサンス
→フェルメール、レンブラントなどのバロック
→モネ、ゴッホ、ルノワール、ムンクなどの近代美術
→ピカソ、シャガール、アンディー・ウォーホルなどの現代美術
肌で感じる作品とその歴史の数々に、美術書から目の前に実物大の作品が飛び出してきて浴びている様にも感じられます。
それは、美術書を読んだり、授業を受けるだけでは、決して得られない体感。
また、良く知っていたつもりの絵画が、想像していたより大きかったり、小さかったり。
そんな小さな発見、感動をいくつも得ることができます。
2.現地でしか見られない名画を体感できる
展覧会などで、時々本物が日本にやってくる名画もあります。
でも、世界にはその場から動かすのが困難な作品もたくさんあり、現地に行かないと観られない作品が数多くあります。
そんな作品の数々が、実物大で再現されて一堂に会した美術館。
世界を旅しなければ観ることのできないはずの作品を、ここだけで体感できる魅力があります。
また現地でも一度には観られない作品が、同じ空間で再現されている展示もあります。
エル・グレコの大祭壇衝立画復元は、戦禍により絵が散逸してしまったので、現在、本物はどこに行っても一緒には観ることができません。
それを復元する画期的な試みにより、大塚国際美術館は、これらを同じ場所で観られる世界で唯一の場所となりました。
3.近づいてさわることができる
大塚国際美術館の名画は全て陶板に高い技術で再現した『陶板複製画』
2000年以上にわたってそのままの色と姿で残るとされ、とても耐久性の高いものです。
なので、大塚国際美術館では作品やその再現された絵具の立体感を、顔を近づけて見たり、触って確かめたりすることができます。
本物では、まず許可されませんよね。
なお、陶板複製画を作る時、得られた情報量の違いで、作品によって絵具の立体感の再現度は違うそうです。
写真の『ひまわり』はかなり再現度の高い作品です。
本物が新宿の『損保ジャパン日本興亜美術館』に常設されているので、両方を楽しんでみるのも良いでしょう。
本物はさわったらダメですよ。笑
4.現存しない名画にふれられる
何かの理由で、もう本物は存在しない名画もここには存在します。
たとえば、ゴッホが描いた7つの「花瓶に生けたひまわり」のひとつ。
1945年兵庫県芦屋市で焼失したこの作品は、もうこの世界に本物が存在しません。
しかし、この美術館では本物さながらに展示され、ふれることもできるのです。
また、修復作業でその姿を大きく変えた名画。
その以前の姿もこちらには残されていて、楽しむことができます。
たとえば、レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐。
こちらの作品は、繰り返される修復作業で、新たに描き足されたりで、元の姿とは段々姿を変えてきていたそうです。
それを近年、新しい修復家が上塗りされてきた絵の具を全部落としてみたら、ダ・ヴィンチの描いた本物の姿が現れて、それを知ることになったそうです。(下の写真がその現在の姿)
こちらの作品は修復前と修復後、どちらも同じ部屋に展示されていて、向かい合わせで、見比べられるようになっています。
5.他の芸術とのコラボ、定時ガイドなど、新しい価値の提案
今まででは考えられなかった美術館の利用方法が、美術館側から提案され実施されています。
システィーナ礼拝堂を再現したホールが、NHK紅白歌合戦で米津玄師さんの中継舞台となった様に、大塚国際美術館では、ライブや歌舞伎など、イベントの会場となることも多々あります。
他の芸術とのコラボ。
これも『陶板複製画』がとても耐久性の高いものだからできる試み。
また、ここが世界に類を見ない、名画の『陶板複製画』が集合した美術館である価値を理解し、無料(入場料は必要)の定時ガイドを1日に何回も実施しています。
これだけの選りすぐりの名画を体感しながら、一度に理解が深まる機会は他にないでしょう。
他では、絵画の登場人物になりきる衣装が用意されていたり、来場者を楽しませる工夫が凝らされています。
厳粛な美術館だと怒られてしまいそうな試みを、美術館自ら率先して提案しているところも、大塚国際美術館の魅力の一つです。
個人的には、徳島県出身の猪子寿之さん率いるチームラボとのコラボも見てみたいところ。
まとめ
『陶板複製画』という耐久性の高い複製画の強みをいかした『大塚国際美術館』
本物にはできない試みや強みを、いくつも持っているところが、この美術館が唯一無二の価値を生み出している所以です。
ぜひ行ってその魅力に触れてみてください。
以上、『大塚国際美術館』を楽しむ参考になれば幸いです。